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木材とゴキブリの意外な関係

木くい虫 vol.37 No.3 (2011)

37-3_kikuimushi.jpgゴキブリというと、見るのも聞くのもいやだという人が多いに違いない。実際チャバネゴキブリやクロゴキブリ等は家屋内に棲息し、ポリオウイルスや消化器系伝染病を媒介する衛生害虫である。しかし、直接的な害よりもむしろ不快感を与える虫として嫌われているのではないだろうか。ゴキブリ目昆虫は熱帯地方を中心に世界で約3500種知られており、日本からは50 種以上記録されている。屋内に棲息する種はそのうちの1%以下であり、大部分の種は野外でひっそり生活している。わずか1%以下の「悪者」のために、人から目の仇にされる多くのゴキブリ達に同情するのは筆者だけであろうか。

ここではゴキブリと木材の関係について述べる。オオゴキブリ(写真)は体長4㎝ 程度の名前のとおり大きなゴキブリである。森林の倒木や枯死木中で、幼虫も成虫も一緒に集団生活を行っている。彼らは木部の朽ちた部分を餌資源として利用しており、炭素循環の一翼を担っている。シロアリのような社会性を持つわけではないが、亜社会的と言えるような生活をしている。野外でオオゴキブリを観察していると、シロアリに近縁であることを改めて感じる。筆者の知るかぎり、日本で木材を食べる種はオオゴキブリだけであるが、熱帯地方には木材を食す種が結構あり、森林生態系において重要な役割を果たしている。

ゴキブリは熱帯起源の昆虫であり、大阪付近の野外には、オオゴキブリ、モリチャバネゴキブリ、ヒメクロゴキブリ程度しか棲息していないが、南西諸島に行くと多くの種が見られる。中でもルリゴキブリは瑠璃色に輝き、タマムシを思わせる魅力的な種であり、本種を石垣島で初めて採集したときの感激を忘れることができない。筆者の標本箱にはルリゴキブリ、ヤエヤママダラゴキブリ、コマダラゴキブリ等の「綺麗どころ」が並んでいる。これからもゴキブリと付き合っていくことであろう。

(M・H)

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