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ここは地獄?

みちくさ vol.41 No.5 (2015)

手元にある落語のCD、DVD(多くはTV録画)が相当数になってきたので、そのリストを作ってみた。作業の結果を眺めると、ネタ(演目)数は古典、新作含め三百近い。古典落語のネタは江戸・上方合わせて六百は超えるそうだから、ほぼその半数がカバーされていることになる。

演者の多かったのは「寝床」「船徳」「芝浜」「うどん屋」「ちりとてちん」「初天神」「小言幸兵衛」「壷算」「猫の災難」など。落語にはクラシック音楽の楽譜に相当したものはないから、同じネタでも演者や時・場所・持ち時間によってずいぶん変わる。それが面白い。

収録物だけではなく、生の落語を聴くために、一年に数回は足を運ぶ。近くで行われるホールでの落語もあれば、毎日開催されている「定席」もある。

定席では一人の持ち時間は通常十五分。この時間割りにあわせ、落語家が五人ほど、これに漫才など、落語以外の「色物」が組み合わされ、最後にトリが長めの話をして終了、ということになる。この間、中休みもいれて約四時間。

演者は予め知ることができるが、どのような噺がされるのかは、多くの場合、事前には分からない。演者自身が雰囲気に合わせて決めていくのである。聴く方としては、それも楽しみの一つになる。

ただ、どのようなネタを出してもいい、というわけでもなく、一定のルールがある。その一つが「付くネタはしない」、つまり前の出番の人が喋った内容と似たものはできない、ということ。トリの人は、五人ほどが話し終えた後に出るわけだから、持ちネタがかなりないと務まらない。

もう一つは「季節」。夏なら「船徳」「青菜」など。怪談話も定番で、「もう半分」は気味が悪い。

「地獄八景亡者戯(じごくばっけいもうじゃのたわむれ)」という、死人が活躍する噺もある。これは先日亡くなった桂米朝さんが、古い上方落語にあった「冥土」に因むいくつかのエピソードを繋げて仕上げたもの。全編を演じると一時間を超える。

ところで、随分以前、町外れの飲み屋街で、「HELL  HERE」と表示されたネオンサインを見かけたことがある。「えっ?」と思い、近寄ってよく見ると単語間の「O」と「T」が消えていた。

これ作り話ではない。

(徒然亭)

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