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天然食品は安全なの?

虫めがね vol.37 No.2 (2011)

「当社の食品はすべて天然のものを材料としており、合成化学品は一切添加しておりません。従って安全で身体に良い健康食品です」

このような食品のPRをテレビや新聞、雑誌などで多く見かけるが、いつも不思議に思っている。このような説明を行っている人に、

「なぜ、天然物は安全なのですか?」と尋ねたいと思っている。

予想される一つの返答は、

「天然物はもともと自然界にあったもので、神様が作ったものです」

と言うことだろうか。神様は間違ったことをしないのだろうか。危険な物を作らないのだろうか。もともと自然界にあって神様が作ったものでも、毒フグ、毒キノコ、黄変米など、危険な食べ物は沢山ある。また、

「なぜ、合成化学品は危ないのですか」

とも尋ねたいと思っている。想定される答えの一つは、

「合成品は人間が作ったものです。人間は間違いをおかすので、危険なものもつくる」

であろうか。また、

「もともと自然界にあったものでないので、未知の物、未経験の物への不安がある」

という心理的不安も考えられる。これは人類のDNAに植え付けられた本能的なものであろう。

人々が喜んで、何の抵抗もなく受け入れている種なしブドウはブドウの開花の前後に、ジベレリンという化学薬品(農薬)で処理して人工的につくったもので、自然界にあったものではない。おいしいお米として多くの消費者に受け入れられているコシヒカリ、ササニシキは、どちらも人工的に品種改良されて出来た物で、神様がお造りになった物ではない。でもこれらが人工物質なので危険な食品ですと説明されているのを聞いたことがない。

「天然物は安全で、合成化学品は危険です」

これは間違った迷信です。冒頭の食品会社のPRはこの迷信を巧妙に使って消費者に取り入っていると言えよう。

 (赤タイ)

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