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ノミとはどんな虫ですか?

虫めがね vol.38 No.4 (2012)

ノミ・シラミ 馬の尿する枕元

と江戸時代の俳聖松尾芭蕉が詠んでいる。このようにノミやシラミは人々の身ぢかで、生活の中にいる昆虫であった。私は終戦まもない頃に少年時代をすごしたが、夜、寝ていると、何となく脚のあたりがかゆくなったので、ふとんをパッとめくるとノミがピョンと飛び出てきた。急いでそれを捕まえて爪の上に置いてパチンとつぶすと、吸血していた血がジュとノミから出てくる。コヤツ俺の大切な血液を吸ったにっくき奴と、仇でも獲った気持ちになったものだ。

先日、東京のある大学で衛生害虫についての話をした。そして、

「何か質問はありませんか」

と尋ねると、ある学生が手を上げて、

「ノミはどのくらいの大きさの害虫ですか。また、どのような害があるのですか」

であった。

この質問は私にとって想定外であった。ノミは身近な害虫で誰でも知っていると何となく思って話していたわけである。しかし、良く考えてみると無理もない。現代の日本の若者たちはノミにお目にかかったことがない人が多いであろう。昔(私の少年時代頃まで)はノミは世間の常識であり、ほぼ、どこの家庭にでもいた。その頃、薬局に行けばどこでも買えたノミ取粉(殺虫粉剤)も、今ではもう売れないので薬局では買えまい。

ノミに吸血されると刺されたところが赤く腫れてかゆくなります。これがひどくなるとアレルギー性皮膚炎になることもあります。私たち人間は、そこで殺虫剤などでノミ退治をします。しかし、ペットや家畜などは、自分では駆除できないので、常時吸血され続けるとストレスになり食欲がなくなり、元気がなくなることがあります。ある畜産農家の乳牛が元気がなくなり、ミルクの出が悪くなったので詳しく原因を調べると、その乳牛の体に数百匹近いノミが寄生していたという報告がある。また、ある種のノミはペストや発疹熱のベクター(病原体媒介昆虫)であり、ノミの大繁殖は人へのペストの大流行の原因となります、などを説明したら納得した。

「害虫は時代によって、場所によって異なるのだ」と説明している私自身が、時代によって異なるのだと納得した場面であった。

(赤タイ)

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