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ゴキブリは群れているのでイヤ

虫めがね vol.40 No.1 (2014)

仲間で群れて生活している生き物は多い。カラスやスズメが群れをなして空を飛んでいたり、木に止まっている様子は良く見かける。シマウマやバッファローが集団で大移動している光景などを、テレビや映画で見たことがある人も多いだろう。また、小さな魚も何千尾も集団で泳いでいることがある。このような大群ではないがゴキブリも仲間で集まって生活している。ゴキブリの糞に含まれる集合フェロモンによって仲間を呼びあつめているのだ。

大学の学生約一八〇人に「嫌いな虫はなんですか」とアンケートを取った。その結果、ムカデやクモを挙げた学生も多かったが、断然群を抜いてゴキブリがトップにあった。「なぜゴキブリが嫌ですか」との質問には、群れているから嫌という回答もあった。たしかに、ぎらぎらと脂ぎって、光沢のあるゴキブリが集まっているのを見るのは気持ちが良いものではない。しかし、ゴキブリは何となく群れているのではない。それなりの理由がある。群れることによって乾燥や寒さに対する抵抗力が高まる。また、一匹で生活するより仲間と一緒に生活すれば、餌にありつける確率や配偶者に巡り合えるチャンスも高まる。京都大学の石井教授らのチャバネゴキブリの実験では、一匹で飼育した場合より複数匹を一緒に飼育した方が成虫になるのが早かった。

人類も発生以来群れて生活する習性をもっている。発生当初は家族、親族程度で群れていたのだろうが、その群れは歴史とともに大きくなり、部族、種族で固まり、今では国家という大きな集団で生活している。人類もゴキブリと同じように一人っ子よりも兄弟が多い方が成長が早いのであろうか。人の場合、そのような研究例は無いが、一人っ子であっても、幼稚園に行き、小学校、中学校に行って、集団の環境で育つのでゴキブリのような結果にはならないだろう。

ゴキブリが群れて生活する理由のもう一つは、野外ではカエルやネズミ、野鳥などの天敵に襲われにくいこともある。一匹で行動しておればカエルにとって攻撃ターゲットは絞られるので、近づいてペロリであるが、群れていればカエルも近づき難い。近づいてもどれから攻撃してよいのか、きっかけをつかむのに困る。カエルはまず、群れ全体に攻撃をしかけてみる。おどろいたゴキブリが大騒ぎして、群れから外れて一匹で動いているゴキブリを見つけたら、それを目がけて攻撃し、ペロリとたべる。

(赤タイ)

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