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あなたの家にノミはいませんか

虫めがね vol.40 No.4 (2014)

先日、テレビを見ていると一家に猫を八頭も飼っている家庭が紹介されていた。この家庭は子どもがいないなどの事情があったが、最近は犬、猫を飼育している家庭が増えたのは確かである。生活レベルの向上や少子化の影響でペットを飼う家庭が増えたのであろう。私が子どもの頃は犬は番犬であり、猫はネズミ取りであるという考えであったが、今では家族の一員としてペットを飼っている家庭が多い。ペットによって精神的な安らぎを得る面が評価されているわけだ。

家族の一員だから、買い物に出かける時には、乗用車に乗せて出かけ、家に戻ると室内で飼う。テレビを見る時も犬を横に置いて一緒に見ている。寝るときは同じベッドで寝る人もいる。このような飼育習慣の変化により、ノミは一時期忘れられかけた害虫であったが、再びその被害を多くしている。

うちの犬はいつも清潔にしているのでノミは居ないと思っていたが、先日ノミが見つかった。きっと犬の散歩中に近所の犬とじゃれついている時にもらったのだろうと考える人も多いだろう。だが、カリフォルニア大学(米国)のラスト教授の実験では、ネコ同士がじゃれて体を接しても、他方へノミが移動することは少なかった。同じように、ノミがついている猫を人が抱いたくらいではノミは人体へ移ってくることは少ない。ノミは宿主嗜好性がはっきりしているので、猫についているネコノミは猫の血液や体温を好むわけで、わざわざ猫から離れて人に移ることは少ない。

野良猫や野良犬などが棲みついている場所や、彼らの通り道となる公園の草むらや砂場などを飼い犬が通過すると、そこに潜んで待機していたノミがジャンプして犬に飛びつく。飼い犬や猫がノミをもらうのはこのケースが多い。

ネコノミは卵→幼虫→蛹→成虫と完全変態をする。人を吸血するのは成虫だけだが、成虫の寿命は約一ヶ月である。しかし、成虫になる直前の蛹の寿命は長い。寒いとか乾燥などの外的環境が悪い時や、ノミが吸血しようとする動物が現れない時には、飲まず食わずのままで半年でも一年でもじっと待機している。そして人や動物が近づくと直ちに繭の殻を破ってジャンプして飛びつく。この時のノミのジャンプ力は体長の約百五十倍も飛び上がることが出来る。これを身長一六五㎝ の人にたとえると、約二五〇m の高さに飛び上がることになる。このようなノミの生きるためのメカニズムには驚くほかない。

(赤タイ)

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