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石切山のセミたち

虫めがね vol.41 No.6 (2015)

我が家の近くに、石切山と言う標高二八四m の小さな山がある。手ごろな山なので、健康保持の為に、週に一~二回ほど登っている。この山の頂上に着くと、南側に広く大阪平野が一望できる。眼下に大阪国際空港の飛行機の発着も見ることが出来る。私はここからの眺めが甚く気に入っている。

今年の夏も定期的にこの山に登った。夏は、この山はセミたちの楽園であるようだ。七月の初めの頃はアブラゼミの鳴き声が騒がしく聞こえた。七月の中旬頃から、ヒグラシがあちこちで鳴きはじめ、そのうちに、アブラゼミを圧倒し賑やかしく鳴くようになった。蝉しぐれとはこのことかと思えるくらいヒグラシの声が賑やかしく聞こえてくる。甲子園球場の高校野球が中盤を迎える八月の中ごろになると、ツクツクボウシやミンミンゼミの鳴き声が聞こえるようになる。しかし、これらのセミは賑やかしく聞こえるほどには多くない。高校野球が終わり、ヒグラシが静かになり、ツクツクボウシがのどかに鳴く頃になると、「ああ、やっと、長くて暑かった夏も終わりかな」と秋の訪れを感じるようになる。

住宅地にある我が家の近くの公園では、夏の盛りには、クマゼミとアブラゼミが多い。夏も終わり頃になると、ツクツクボウシが少し現れるが、ヒグラシやミンミンゼミはほとんど現れない。七月の中頃から八月にかけての夏の最盛期は、クマゼミの「ワシワシワシ」と大声で鳴く声がアブラゼミを圧倒し、公園の木々の隅々まで支配している。しかし、子どもの頃からこの地で育った人に訊くと、「昔は、この辺りはアブラゼミが多かった。でも、今はクマゼミの方が多くなった」という。

私が子どもの頃過ごした福岡の田舎でも、近くの神社の境内にセミ取りに行くと、アブラゼミかニイニイゼミがほとんどで、クマゼミは少なかった。大型で勇猛な感じのクマゼミを捕まえるとうれしくて、友だちに自慢して見せたものだった。

最近になって、アブラゼミが減って、クマゼミが増えた理由については、大阪市大の研究グループによると、樹木が多く、緑が豊富な環境ではアブラゼミが多い。ところが、緑が乏しく地面が乾燥し固くなった環境ではクマゼミが増えるそうである。

クマゼミが多いか少ないかは、その地域の自然環境の緑化度の指標となるのかもしれない。

♪梅雨明けを告げるか庭の蝉しぐれ

(赤タイ)

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