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お爺ちゃん、お婆ちゃんは、なぜ孫が可愛いのだろうか?

虫めがね vol.42 No.2 (2016)

お爺ちゃん、お婆ちゃんたちは孫が可愛いことを“目の中に入れても痛くない”ほど可愛いという。わたしにも孫がいるが、確かにかわいい。自分の二人の娘の幼稚園の運動会や学芸会などには、仕事が忙しくて行った記憶がない。ところが孫の場合には万障繰り合わせてでも見に行っている。何故だろう?

子育て世代のお父さん、お母さんは仕事もまだ現役で大変忙しい。仕事を休んで子どもの運動会には行き難い。ところが、お爺ちゃん、お婆ちゃん世代は、現役は退いて時間的にも余裕がある。だから、見に行けるのだ。つまり、時間的余裕が理由の一つである。

それに、お父さん、お母さんは子どもの養育に責任がある。一人前にひとり立ちできるまで育てる責任がある。可愛い、かわいいと甘い気持ちにばかりにはなっておれない。ところが、お爺ちゃん、お婆ちゃんには直接の責任はない。ちょっと距離を置いて眺めているので、“かわいい”の感情が大きくふくらむという精神的余裕が二つ目の理由である。このような説明を今まで聞いてきたし、そういうものかもしれないと思っていた。

これらの理由も正しいと思うが、別の理由もあるのではないかと思えてきた。ヒト(ホモ・サピエンス)と最も近い霊長類であるチンパンジーは、出産した母サルは子サルが一人立ちするまでの約五年間は子育てに手を取られて、次の出産が出来ない。ゴリラも約四年間隔でしか出産しない。ところが我々ヒトは、子どもが離乳食を食べ始める生後五、六ケ月頃から、お爺ちゃん、お婆ちゃんが子育てに参加し、母親の負担を軽減する。それで、ヒトの母親は毎年でも出産可能である。その結果、ヒトは地球上に現在七十億人を超える大繁殖を成し遂げた。チンパンジーやゴリラと比べてその数の差は歴然である。現在のヒトの祖先は約二十万年前に地球上に現れた。その後の二十万年の歴史の中で、孫が可愛い、私が面倒見てあげると母親に代わって育児を積極的に手伝うお爺ちゃん、お婆ちゃんの血統(DNA)が現在繁栄しているヒトとして残った。当然、面倒見が悪い血統は淘汰された。

つまり、現在この世にいるヒトは、孫は目の中に入れても痛くないほど可愛いと思うDNAの持ち主の子孫である。お爺ちゃん、お婆ちゃんが孫が可愛いと思う気持ちは長い間にヒトのDNAにインプットされているのである。

♪孫を抱く妻の笑顔の甘いこと

(赤タイ)

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