木材保存誌コラム

ホーム > 木材保存誌コラム > 虫めがね > グローバル化と招かざる来訪者

木材保存誌コラム

グローバル化と招かざる来訪者

虫めがね vol.45 No.4 (2019)

今はグローバル化の時代と言われている。人や物が国境を越えて移動している。それも、ひと昔と比べて格段に大量に、そして短期間に移動しているのが特徴である。

昨年(二〇一八年)十二月には、日本に観光目的でやって来た外国人が年間三千万人を突破したそうだ。東京・京都・奈良などの代表的観光地だけでなく、今では地方へ行っても大勢の訪日観光客に出会う。来年(二〇二〇年)は東京オリンピックがあるので、四千万を超えるだろうと日本政府は予想(期待?)している。

グローバル化により日本にやってくるのは人だけではない。一九九〇年代初めに、史上最強の侵略的外来生物と言われているアルゼンチンアリが広島県廿日市市で初めて確認された。このアリは、元は日本には居なかったが、今では、日本国内のあちこちに分布を拡大した。一九九五年九月には、セアカゴケグモという毒クモが大阪府高石市で最初に発見され、今では近畿地方を中心に広く分布定着している。

二〇一四年には東京都の代々木公園で蚊に刺されてデング熱に感染するという事件が起こったことは、まだ記憶に新しい。デング熱は日本では無くなったと考えられていたが、六九年ぶりに国内感染が発生したわけだ。これもデング熱常在地域の東南アジアからの来訪者や、日本人が海外旅行して現地で感染し、日本に帰国する際にデング熱ウイルスを持ち込むことが原因と考えられている。

また、南米原産のアカヒアリが二〇一七年五月に兵庫県尼崎市で、中国からの貨物船で運ばれてきたコンテナの中から発見された。ヒアリはアルゼンチン、ブラジルなどの南米中部が原産と考えられているが、今では、米国、オーストラリア、台湾、中国と分布が拡大している。オーストラリアの隣国ニュージーランドでは、今までのところ水際阻止に成功している。日本でもまだ国内の定着は確認されておらず、環境省・厚生労働省が何とか水際で阻止しようと対策をとっている。アカヒアリは攻撃性がかなり強く、ソレノプシンやホスホリパーゼなどの毒成分を持ち、刺されるとアナフィラキシーにより、死亡することもある。米国では過去に累計で一〇〇名を越える死者が出ていると言う。

人間にとって必要・有益なものだけの来訪を認め、無用・有害なものの侵入は拒否する事などは出来ない。それがグローバル化と言うものであろう。

♪旅終えてわが家の茶漬け旨しとも

(赤タイ)

  < 飲料自動販売機―その後
コラムトップ
プラスチック塵と海洋汚染 >

ページトップ