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ドードー(dodo)の絶滅

虫めがね vol.46 No.1 (2020)

インド洋に浮かぶモーリシャス島と呼ばれる小さな孤島がある。面積は一八六五km2で、日本の淡路島の約三倍の大きさの火山島である。この島はアジアとアフリカを結ぶ主要航路から外れており、長い間無人島であった。この島にはトラやオオカミのような肉食獣は生息しておらず、島に生きる動物たちは極めて平穏に暮らしていた。この島で進化した固有の動物に珍しいドードー(dodo)という鳥がいた。七面鳥くらいの大きさで、空は飛べず、地上をよたよた歩きながら、果実や木の実などを主食にして生活していた。

ところが世界は大航海時代に入り、一五世紀にはインド人、ポルトガル人が航海の途中に立ち寄った。一七世紀に入り、オランダ人がインド航路の補給地として入植を始めた。オランダ人が入植するとサトウキビの栽培を大規模に始め、農園の労働力として奴隷の移入が行われた。人間の入植者が増えると、ドードーを食料として捕獲するようになった。襲ってくる天敵がいない孤島で進化したので、平穏な生活に慣れており、警戒心が薄く、人間が捕獲しようと近づいても逃げようともしない。更に、ドードーは地上に巣を作り、卵を産んだ。この卵も人間により容易に捕食された。

こうして、ドードーの個体数は急速に減少していった。先に入植した人たちは、ドードーが減少していくのに気が付いて、捕獲を抑制すべきではないかと考えた。しかし、自分たちが捕獲を抑制しても、遅れて入植してきた人間たちが、捕食するので、抑制した者が損をするだけだと考えた。こうして、乱獲は止まらず、オランダ人が入植を始めて八〇年余りでドードーはモーリシャス島から完全に姿を消し、絶滅した。

この事例は、孤島と言う限定された環境で起こったので、人間の自然環境破壊が典型的に現れている。

それから約三四〇年後の今の世界を見渡すと、この事例と同じことが、今度は地球規模で起こっているように見える。世界の指導者は「自国ファースト」の掛け声とともに、地球上からいろいろな物を乱獲している。石油、レア・メタル、海からは鯨や魚類の乱獲。更には、大気中に大量の二酸化炭素を排出して、正常な気象を奪っている。また、PM2.5や排気ガスを放出して、生物にとって大切な青空を奪っている。

国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP 25 )で地球環境を守ろうと話し合いが行われているが、条約から離脱する国が出て、条約を守り二酸化炭素の排出を抑制しようとする国が損をする状態となる。これも、三四〇年前のモーリシャスでドードーの乱獲が止まらなかった状態に酷似している。

♪人類は神が造りし未完品か

(赤タイ)

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