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よくある質問

Q1.被害度とは何ですか?
A1. 杭の被害状況を観察し、以下の基準にしたがって判定した値です。
  0 : 健全
  1 : 部分的に軽度の腐朽又はぎ(蟻)害
  2 : 全面的に軽度の腐朽又はぎ害
  3 : 2の状態の上に部分的に激しい腐朽
  4 : 全面的に激しい腐朽又はぎ害
  5 : 腐朽又はぎ害によって形が崩れる
  (典型的な被害杭の写真はこちら)
通常、同一条件の杭を10本使用し、被害度の平均を算出します。
Q2.グラフの中にある赤い点線は何を意味していますか?
A2. 野外杭試験では、杭の耐久性能を杭の平均被害度が2.5になった時点の年数(これを『耐用年数』と呼びます)で評価します。グラフの点が赤い点線と交わるまでの年数が長いほど耐久性が高いことになります。
Q3.耐朽性(「もつ」,「もたない」)の判断はどのように行うのですか?
A3. A1の基準で評価した被害度の平均が2.5に達した年数(耐用年数(Q2,A2参照))により木材の耐朽性が区分されていて,主要な樹種(心材)の耐朽性(耐用年数)も,この評価方法に基づいて明らかにされています。
Q4.被害度の値が前年と比べ低下している場合があるのはなぜですか?
A4. 被害度の判定は、主に目視で行いますので、誤差が多少発生します。被害度のグラフは平滑化して見るのがよいでしょう。
Q5.異なる試験地での結果を比較することは出来ますか?
A5. 試験地によって試験した素材(ヒノキ、カラマツなど)の伐採地が異なったり、生息する木材腐朽菌やシロアリの種類や密度が違うため、異なる試験地の結果を単純に比較することは出来ません。
素材によって、また環境によって、耐用年数は異なるということです。
Q6.無処理の場合,同じ樹種でも辺材と心材で耐朽性が異なるのはなぜですか?
A6. 木材の辺材部には糖類,蛋白質,アミノ酸など,木材腐朽菌やカビなどの栄養源となる成分が多く含まれています。一方,心材部にはフェノール・ポリフェノール類,トロポロン類,テルペン類など,木材腐朽菌やカビなどに抵抗性を示す成分を含むものが多くあります。このように,含有している成分により辺材と心材の耐朽性に違いが見られるのです。いずれの樹種も辺材の耐朽性は低いため,一般的に素材の耐朽性は心材の耐用年数で判断されています。
Q7.木材保存剤で処理することで、耐用年数はどのくらい延長できるものですか?
A7. JIS K 1571:2010では、保存処理杭の耐用年数が、無処理杭の3倍以上の場合、その薬剤は防腐性能基準を満たすと定められています。
個々のデータについては、 こちらからご確認ください
Q8.野外杭試験での耐用年数と実際の木製品の寿命との間にはどの様な関係があるのでしょうか?
A8. 木材の腐朽のスピードは、木材自身が持っている耐朽性の強弱に加えて、温度、水分、空気の環境条件によっても変わります。野外杭試験の地際部は、心材成分や防腐剤の防腐成分の分解、流出がおこりやすく、水、空気などの環境条件に関しては、腐朽菌の生育に適した場所です。実際の木製品は様々な条件で使用されますので、屋外の木柱や枕木のように過酷な条件で使用される木製品の寿命は、野外杭試験の耐用年数に近く、住宅部材のように地面に接触せず雨水も直接かからない条件での寿命は、杭試験の耐用年数より大幅に長くなります。
Q9.20年以内に腐ってしまう保存処理杭がありますが、大丈夫でしょうか?
A9. 野外杭試験では、腐朽や蟻害が起きやすい環境におかれた木材が劣化するまでに必要な年数を評価しています。住宅の場合、何らかの故障により大量の雨水等の浸入があったとしても、被害が生じるまでこの程度の年数がかかると考えると良いでしょう。
Q10.野外杭試験の保存処理杭と実際の保存処理木材は同じ品質なのですか?
A10. 同じではありません。試験杭は、3cm角で長さも60cm、と小さいので薬剤をむらなく注入できます。これに対して、実際の木製品や住宅に使用される材料は断面も長さも大きいため、心材の中心までむらなく注入することは困難です。つまり、保存処理試験杭は品質が均一ですが、実際の保存処理木材は不均一です。しかし、杭での試験結果が役に立たないということではありません。JAS規格等に則って製造された保存処理木材は、薬剤が浸透した部分がバリア層となって中心付近の未浸透部分を保護するしくみなので、杭試験における耐用年数はバリア層の寿命、ひいては保存処理木材全体の寿命を推定する上で非常に重要な情報となるのです。

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