ホーム > 木材保存誌コラム > 虫めがね > ヒトにはなぜ体毛がないのか?
木材保存誌コラム
ヒトにはなぜ体毛がないのか?
虫めがね vol.51 No.6 (2026)
わたしは、生物の中でヒトが最も興味深い生き物です。
なぜならヒトが一番身近な生き物であるからです。
ヒト(猿人)は約五〇〇万年前に東アフリカの熱帯雨林(ジャングル)で樹上生活していた類人猿の一部が草原(サバンナ)に出て直立二足歩行生活を始めたことで類人猿から分岐して誕生した。サバンナに出たヒトは、それまで主に植物(種子や根茎類)を食べていたが、しだいに昆虫や小動物(ヘビ、カエル、トカゲ、魚など)なども食べるようになった。この時にヒトがサバンナに出なかったら今でも樹上生活をしている類人猿の一種であったかもしれない。類人猿(ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、ボノボ)の中でヒトのみが体毛がなく、不思議に思う。
何故だろう?
ヒトに体毛がないことの説明に「半水生生活説」と言うのがある。ヒトは約五〇〇万年前にジャングルを出て海岸や湖に近い水辺で生活をした。そして、水に入って魚や貝類を採って食料にした。水の中を動くには体毛がない方が動きやすいので、しだいに無毛化していった。また、浅瀬を渡るには四足より立ち上がって二足歩行の方が都合が良いので、直立二足歩行へと進化した。
この仮説の弱点は海や湖の近くで生活をしたヒトの集団があったとしても、その集団がその後陸上に上がり全世界へ広がったと考えるには無理があることである。
もう一つの仮説は「未熟児説」である。ヒトは脳が異常に発達して大きくなり直立したため、胎児が母体の骨盤から出難くなった。それで小さい未熟児の赤子として産むようになった。犬や猫のように、多くの哺乳動物は産まれるとすぐに母親の母乳を求めて歩き出す。ところがヒトは未熟児なので、自分の力では母乳にたどり着けないし、一年近くも立って歩くことも出来ない。体毛もない。
この仮説の弱点は未熟児として産まれた時は無毛でも、その後、成長するにつれて体毛が生えても良いのではないか、生えないのは何故か、について説明できないことである。
もっとも納得できる説は「走行狩猟説」である。サバンナに移行したヒトは食料を得るために動物たちを追ってサバンナを走り回る必要があった。サバンナの猛暑の中を走りまわると体温が上昇する。体毛があると体温を下げるのに都合が悪い。また、ヒトは汗腺が進化して発汗によって熱を放出するようになった。汗を発散するには体毛は邪魔になる。それでしだいに体毛は退化して無くなった。チンパンジーやゴリラなど、他の類人猿は走行狩猟をやらないので体毛を保持している。他方、サバンナを走り回り獲物を捕らえているライオンやヒョウなどは体毛がない。
♪人類をサピエンスと呼びすまし顔
(赤タイ)




