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木材保存誌コラム
イタリア人は蚊に刺されないのか?
虫めがね vol.51 No.3 (2025)
かなり昔の話になるが、仕事でイタリアに出張した時のことである。イタリアでは牛豚舎のハエをどのように駆除しているのか視察する為に地方の山村に行った。数か所の牛豚舎を見て回るうちに、わたしの両腕には蚊に刺されて赤く腫れた膨疹があちこちに出来て痒くてたまらなかった。夏の暖かい日であったので半袖シャツを着ていたので両腕のあちこちが襲われたのだ。
“痒くてたまらん”という顔をしていたら、同行していたイタリア人の案内人二人は、わたしの腕を見て「ケラケラ」と笑っている。二人とも蚊攻撃はなく、何ともないらしい。山村なので蚊は沢山いる。二人のイタリア人も蚊に刺されている筈である。それとも蚊はイタリア人(白人)は好きでないのか?有色人種のわたしを好んで襲ってくるのか?不思議でならなかった。わたしは皮膚が過敏で、蚊に刺されると大きく膨れ上がって痒くなるのは日本でもたびたび経験している。それにしても二人のイタリア人はなぜ蚊に刺されないのか?この疑問はずっと今に至るまでわたしの頭の片隅に残っていた。
最近ある文献を読んでいたら、蚊に刺されて痒いのは蚊が刺咬中に人体に注入する唾液(タンパク質)に対する人体のアレルギー反応による。そして、そのアレルギー反応は人によって即時型反応、遅延型反応、無反応があることを知った。また、長い間、蚊に刺され続けていると年齢とともにアレルギー反応は減弱して無反応になると書いてあった。
あの時、わたしは蚊に刺されて三〇分くらいして痒くなったので即時型反応であったろう。そしてその痒さは翌日も残ったので遅延型アレルギーも併発したと思える。二人のイタリア人はおそらくこの地で長く暮らして、牛や豚の飼育に従事しているうちに何度も蚊に刺されて、しだいにアレルギー反応は減弱し無反応になったと考えられる。二人は蚊の攻撃を受けなかったのではない。蚊に刺されても無反応(痒くない)になったのだろう。また蚊は黒い色を好み、メラミン色素の多い日焼けした人や黒人、黄色人を白人より好む傾向があるので二人のイタリア人よりもわたしが多く刺されたということもあり得る。
さらに、日本にいる蚊とイタリアにいる蚊では刺咬中に注入される唾液中の抗原に微妙な違いがあり、イタリアの蚊に刺された経験がなかったわたしには過敏に作用することもあったかもしれない。
これで今までずうーと頭に残っていた疑問が解けたような気持になった。
この話題は以前にもこのコラム「虫めがね」(第四九巻三号)に書いたので今回はその続編となる。
♪雪溶けて春は若葉と幕明ける
(赤タイ)