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自然緑地「北雲雀きずきの森」

虫めがね vol.46 No.6 (2020)

わが家から歩いて三十分くらいの所に「北雲雀きずきの森」という自然緑地がある。この名前の由来は、自然の移り変わりに「気付き」、自然の木々を愛し「木好き」、そして、より良い里山を「築く」というテーマのもとに名づけられたそうだ。なかなか佳い名前である。この森は、石切山(標高284m)と釣鐘山(標高205m)の北側の丘陵に位置している。古くは里山として周辺の村人たちが、薪や芝を利用し、松茸取りなど、生活に利用していた。時代が進み、各家庭の煮炊きや風呂沸かしなどに薪は使わなくなり、山は利用されなくなり荒れ放題になった。これを数年前から宝塚市が自然緑地として整備を始め、遊歩道やベンチ、テーブルが出来て、われわれ地域住民にとっては快適な自然散策の地となっている。

人が手を加えて植林した森ではなく、自然のままの雑木林なので、小鳥や昆虫たち、そして植物にとっても楽園である。春にはウグイスの鳴き声が聞こえる。メジロ、キジバト、ツグミ、カケスなど、多種類の野鳥も観察される。夏には、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシなどの鳴き声が姦しい。そして、その主役の変化が夏の移り変わりを知らせてくれる。また、子どもの頃、古里の田舎で採って食べたアケビや山芋、わらび、ゼンマイなどもここで採集できる。

先日、きずきの森の坂道をのんびりと歩いて下っていたら、大きなアオダイショウが前方を悠然と横切っている。一瞬「ギョツ」としたが、蛇たちにとってもここは楽園なんだろう。

小さい子ども連れの家族や、老人夫婦や犬を連れて散歩している人などとすれ違う。この散策で気持ちが良いのは遊歩道ですれ違うと、お互いに「こんにちは」と挨拶し合うことである。街中では見知らぬ人とすれ違っても挨拶をする習慣はなくなっているが。

数年前に、この地に隣接する森を切り開いて太陽電池パネルを設置する大がかりな太陽光発電所建設の計画が持ち上がった。何度かの住民説明会があり、地域住民は自然破壊になると反対をした。しかし、市の許可は下りたと言うことで、いつ工事に着工するのかと思っていたら、今回の新型コロナウィルス問題が起こり、着工は延期された。そのうちにこの計画は立ち消えとなった。聞くところによると、この計画を進めていた企業が経済的に行き詰って倒産し、それに伴い、太陽光発電所計画もご破算になったらしい。今回の新型コロナウィルスが自然破壊から森を守った例である。

♪栗拾い旨い果実は棘の中

(赤タイ)

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