木材保存誌コラム

ホーム > 木材保存誌コラム > みちくさ > 「山線」のこと・2

木材保存誌コラム

「山線」のこと・2

みちくさ vol.48 No.3 (2022)

地元紙に「並行在来線廃止 地域交通のあり方は」という記事があった。この「並行在来線」とは「全国新幹線鉄道整備法に基づき国が計画した整備新幹線と並行して走る在来線」のことで、具体的には、東海道・山陽新幹線と盛岡以南の東北新幹線を除く区間は、JRが採算が合わないと判断すれば新幹線開業時に経営分離することが認められている。

分離後は沿線自治体が鉄道を第三セクター方式で存続させるか廃止してバスに転換するかが主な選択肢で、全国では三セクによる存続が多く、これまで廃線は一九九七年の長野新幹線開業に伴うJR信越線軽井沢-横川(一一・二キロ)のみであった。北海道新幹線の場合はJR函館線の函館-小樽間の二八七・八キロで、うち長万部-小樽間(通称・山線、一四〇・二キロ)は鉄路廃止とバス転換が決まった。そして今後は函館-長万部間の存廃論議が本格化する、ということだ。

この記事では、山線廃止に至った経過を踏まえ、地域の公共財としての鉄路の価値と、バス転換後の新しい交通体系のあり方を考える、とあり、二人の識者の意見が開陳されている。

一人目は民間の政策研究所の地域振興の専門家M氏。

曰く、「今回の山線を廃線にする、という判断は〈北海道百年の計〉を誤る大失敗となるのではないか。そもそも交通インフラは税金で整備、維持するのが世界の常識。軌道は道路と同じく税金で維持補修し、列車の運行は民間企業が担う、〈上下分離〉が世界の〈普通〉。道路に使う道路特別会計の数%を鉄道に回すだけで実現できる。税金はガソリン税を原資としており、二酸化炭素排出の少ない鉄道に回すことに無理は全くない。」等々、論を展開し「開拓の始祖たちによる血と汗の産物である鉄道を、安易に廃止するとなれば、残念でならない。」と締めくくっている。

もう一人は大学教授のK氏。氏は「沿線自治体は鉄路廃止を選択せざるを得なかった面がある。鉄路維持のために巨額の財政負担ができるかとなると、残したくても残せないのが現実。」としながらもいくつかの打開案を述べている。

筆者は無論、M氏の考えに同意するが……。

(徒然亭)

  < 「山線」のこと
コラムトップ
カーボン・なんとか・4 >

ページトップ