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殺虫剤を使わないで害虫駆除はできますか?

虫めがね vol.49 No.2 (2023)

あるセミナーで「生活害虫とその対策」と言う演題で講演をした。わたし達の身辺にいるハエ、蚊、ゴキブリ、蚤、シラミなどの生活害虫駆除がテーマである。このような時によくある質問は、

「殺虫剤を使わないで害虫駆除は出来ないでしょうか?」

である。このような質問が出ると、申し訳ないが、わたしはいささかうんざりする。なぜなら、この質問者は、「殺虫剤は悪玉で、使わない方が良い」という先入観が背景にあっての質問と思えるからである。わたしは殺虫剤を悪玉とは思っていない。たとえば、人が病気になった時に医者からもらって飲む医薬品にも、病気を治す善玉もあれば、使い方によっては、人体に害を与える悪玉もある。同じように、害虫駆除に使う殺虫剤にも、害虫を駆除してくれる善玉もあれば、使い方によっては人の健康に悪影響を与える悪玉もある。

このような質問があった時には、

「殺虫剤を使わない害虫駆除の方法はあります」

と、まず答えることにしている。そして、たとえば、人が病気になった時に、医薬品を使わないで治そうとする場合、どんな手段があるでしょうか。まず、日々の食事の改善、適度の運動、規則正しい生活、それに、針・灸・マッサージや温泉療法なども考えられる。しかし、これらの方法は、対象となる病気には限界がある。どんな病気でもこれで回復と言うわけにはいかない。更には、軽度の症状には効果があっても、かなり進行した病気には、これらの方法では不十分だろう。同じように、害虫駆除にも、ハエ叩きで殺したり、ハエ取りリボンのような粘着シートで捕獲したり、光による誘引捕殺器や、ゴキブリやトコジラミなどを真空掃除機のようなもので吸い取って除去する方法や、蚊の幼虫(ボウフラ)が生息している湖沼などにカダヤシやグッピーなどの小魚を放流してボウフラを食べさせたり、また、庭に鶏を放し飼いにするとハエの幼虫(ウジ)を食べてくれる。家屋の窓を網戸にしたり、蚊帳を使用して蚊から刺されるのを防ぐ方法も可能である。しかし、これらの方法も対象害虫に限界があり、また、何らかの理由で害虫が大発生した時にはお手上げである。そんな時には、やはり殺虫剤に頼らざるを得なくなる。

最近の考え方は、「総合的有害生物管理」(Integrated Pest Management)と言って、殺虫剤を使わない方法と殺虫剤を使う方法の両者の長所を組み合せて、有害生物を管理しようという方向です、と説明して締めくくっている。

♪不満など言わずに蟻は列を行く

(赤タイ)

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